最良の仕事

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     長きにわたって準備していた中目黒のレストラン「バランチェッタ」の外壁工事が
    先週の土日で終わった。話が持ち上がったのは昨年の10月頃だったか、ざっと一年
    かかってしまった。準備と言っても常になんかしらってワケじゃなく、忘れたころに
    ポツポツといった具合だから、実際の作業量は大したこたぁないんだ。

     足場が取り外されたら工事は出来ない。一日で終わると思うけど、万一ってことが
    あるから、気は急くし緊張する。日の出の時間を調べて、早朝6:00に家を出る。

     現場到着。さあて、いよいよ決戦の火ぶたは切って落とされる、のだろうか?
    手伝いはまだ来ていない。っていうか早すぎて来れないのだ。

     慣れない最初は、一時間で一枠のペースで、ここまでは順調だった。現場仕事は
    スピーディかつ素早く終わらせねばならない。理想はスパイ大作戦、モタモタダラダラ
    は禁物は当たり前のこと。「えっ!もう終わったの」で丁度いい。遅いと仕事内容に
    不安を抱かれちゃうし、クレームの原因にもなりかねない。

     特に、こちとら現場は素人同然だからさ、念には念を入れて準備しなくてはならん。
    すでに学校で、壁面サイズを床に描き材料を割り振ってはいたけど、最終確認の為に
    店で同じ事を行う(それでも一壁面の材料が合わなくて現場加工したんだ)。

     こんな感じで。白壁は6ミリのコンクリ板、簡単に穴は空く。最初に小穴(3.4ミリ)、
    次にステンレスのコンクリネジで締める。とはいえ、白板を固定するために裏側に鉄骨が
    入ってるところに当たってしまうと穴は開かずネジも入らない。隣りに穴をあけ直して
    再挑戦。の、繰り返しもしばしば。

     裏はこんな感じ。

     けっこう面倒な部分もある。なんせ、最初のイメージがパッチワークだからさ。
    布みたいにはゆかないけど、そこそこそれらしい雰囲気もいると思ってね。



     一カ所だけGパン貼ってみた。上部にあるから目立たないだろうけど。

     ほどなくして助っ人が到着して、半分くらい出来上がったところで、このビルの
    オーナーが登場。この壁面がよろしくないと私に言うんだ。朝から微妙な空模様で雨が
    シトシトって具合だったけど、クレームが始まったあたりで激しさを増す。オーナーは
    傘だけどアタイはキャップのみ。外壁の気に入らなさを滔々と述べるオーナー、でも
    アタイの心は極めて冷静でね。雨に打たれるのはイヤだけど、傘をささずにこのままの
    状態の方がいいだろ、なんてこと考えておったのよ。いかにもしおらしく聞いている
    感じでしょ。目の前には外壁、その下には助っ人三人、なんだか映画の1シーンの
    ようでもある。

     どうも「塩」のホーロー看板が逆鱗に触れたらしい。コレ以外にも「たばこ」と「米」
    もあったんだけど、それはまだ貼ってなかったの。この「塩」がモダンな外観のビルに
    そぐわないと大いなる怒りを呼び起こしたようだ。ま、そういう気持ちもわからない
    わけではない。さんざん苦労してビルを建てたんだからさ。貸しているとはいえビルの
    一部の壁が「塩」であっちゃ、許せないってことだろう。さらにですよ、私は樹脂の
    塊をくっつけちゃおうって思ってたワケで、やらないでよかったと心から思ったの。
    おふざけもほどほどにせい! と、きっと全部やり直しなんてことになったに違いない。
    いや〜、虎の尾を踏まなくてヨカッタな〜、マジで、つくづくそう思ってしまいました。

     こういう時はひたすら相手の言う事を聞くしかない。変に「でも」なんて反論したら
    それこそ火に油だ。私はレストランのオーナーから命じられての仕事だから、ビルの
    オーナーに何を言われても謝る必要はない。「すみません」なんてことは一切口にしない。
    なにも悪いことをやってるわけでなし、単なる意見の相違だからね。それとさ、怒りは
    持続しないってことを以前何かで読んだ事があるし。怒り続けることはエネルギーも
    必要とするし、疲れる。だから、そのうち終わるだろうと考えていたんだ。

     何ごとによらず終わりは必ず来る。ビルのオーナーの怒りは、雨に打たれて聞いている
    私が消化剤になったのかどうか、鎮まる気配が漂い、語気も弱まり、立ち去ろうとする。
    そのタイミングに、アタイは一言。あなたのおっしゃることはわかる、でも私は
    レストランのオーナーに頼まれているんだから、あなたの言う事に従うわけにはゆかない、
    そのことはあなたもわかるでしょう、だから、レストランのオーナーと相談してください、
    そしてレストランのオーナーからなんらかの指示があれば、私は喜んで従うでしょう、と。

     で、結果はどうなったか。レストランで昼食を待ちながら気になったので、オーナー
    同士が話し合ってる場所に行ったのよね。そしたらビルのオーナーの口調が妙に柔かいの。
    なんだ、言うだけ言ったからスッキリしたの? その口調だけで、一件落着、壁面は
    このままでいいと私は判断したんだ。それとね、あれだけクレームをつけておいて
    「外壁はこのままでOK」なんてこと言えないでしょ。つまりは沈黙=OKの証だと、
    私は考えたワケ。足場が外されたらもうなんも出来ないからさ、その後なんとかせいと
    言って来ないところをみると私の考えは当たりぃ!

     いや〜アタイも大人になったもんだとつくづく思ったんだわさ。相手のココロの
    動きが手に取るように見える。こんな観察眼が30代のときにあればなぁ、なんて
    ないものねだり。


     シートが掛かってて良く見えないけど、これが全景(の一部?)。っていっても、
    これで全部じゃない。まだ看板が残っちょる。

     さあて、この破壊された看板文字をどうしたらよかんべえか?

    次号、乞うご期待?・・・・・・・・・・・・・・の、店主でした。

     

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